水滴穿石

好きなことと感じたことの記録

坂本冬美特別公演「華麗なるサギ師たち」を見に大阪へ

大阪某区の古き良きラブホ街のど真ん中にあるホテルでこれを書いている。

 

窓を覗くと、ガラスがバキバキに割れ、錆びれ切った西洋の城のような建物が見える。

新歌舞伎座からホテルに着くまでの間で何組ものカップルとすれ違った。お仕事中と思わしき華やかに着飾ったお姉さんも数人見かけた。そういう場所だと知ってこの宿を取ったわけではないが、普段目にすることのない風景が見られるのは、少し楽しい。

今泊まっているこのホテルも本来はラブを営む目的のホテルなのではないかと若干気がかりである。いや、でも、そんなこと知らんし。単身で予約したにもかかわらずアメニティ類は部屋に備え付けで二組用意されている。何でよ。持ち帰って家で使います。

 

というわけで、推しである長田光平くんの役者姿を一目見に、東京から大阪まで足を運んだ。

坂本冬美特別公演「華麗なるサギ氏たち」フライヤー

個人的に待ちに待った光平くんに演技のお仕事で、現地で見るのをすごく楽しみにしていた。彼の初舞台を配信で見て、その舞台での立ち姿(立ち姿っていうか、演技とかビジュアルとか役の解釈とか彼自身の滲み出る人間性とか諸々が融合した結果のアウトプットなんだろうけど上手く言語化できない)に一瞬で心を奪われ、生まれて初めて「推し」と呼べる人ができた。お手紙や配信で「あなたが演技する姿をまた見たい」ということを伝え続けて半年ほど経った頃の本公演出演の告知に、まるで自分の夢が叶ったように嬉しかった。

そんなことを懐かしく思い出している。

 

大阪上本町新歌舞伎座に初めて足を運んだ。

劇場前に並んだ大きなのぼり旗の中に、光平くんの名前がある。

新歌舞伎座前ののぼり旗

鮮やかな水色に生える「長田光平」の4文字。道行く人々がみなこの4文字を目にするのかと思うと、なんだかとてつもなくすごいことだと思う。写真を撮りながら脚が震えた。

女性向けコンテンツのオタクをしていると、なかなかファンのコミュニティ以外でそのコンテンツの話をすることはないのだが、世の中のほとんどの人はそのコンテンツのことを知らないんだよなあ、としみじみと考えることがある。光平くんのことを知らない大阪の人々は、「長田光平」と書かれたのぼり旗を見てどう思うんだろう。その4文字が記憶に残るかもしれないし残らないかもしれない。でも、なんか、とにかく、不特定多数の人々に公演の存在と役者の名前が知られるって、滅多にない機会で、その機会を手にした光平くんは本当にすごい人だな、と思った。

 

公演について。

一部のお芝居は鹿鳴館が舞台の話だった。登場人物の立場や抱えた情念がそれぞれ深く魅力的で、お芝居の世界に引き込まれた。冬美さん演じるみどりさんがチャーミングで可愛らしくて、見ていて思わず笑顔になった。彼女が出てくる度に客席から拍手が起きるのが温かくて素敵だなと感じた。

光平くん演じる四郎くんは、信念が強く、愛情深い青年という印象だった。これが正しいか分からないけど素の光平くんのお人柄に通ずる所がたくさんあったように思った。四郎くんが脚本の段階からそういう設定だったのか、光平くんが解釈して演じたからそういう印象に映ったのかは分からないが、思わず目を細めて見守りたくなるようなとても好ましいキャラクターだった。光平くんの孫力(まごぢから)、すごいな……。

それぞれのキャラクターの行動倫理とかは正直初見では理解しきれない部分もあったので、二回目の観劇で新たな発見があるのを楽しみにしている。

二部の歌謡ショーも素晴らしかった。圧巻のお歌は勿論、生演奏やたくさんの衣装替えがとても豪華で見応えがあった。私でも何となく聞いたことあるような曲も何曲かあって、プロの冬美さんファンの方の動きを横目で見つつ楽しく応援した。

冬美さんはすごく丁寧に客席に目を配って手を振ってくださって、多幸感がとてつもなかった。

手厚い。冬美さんのオタクは幸せだろうな。

 

今日は、久しぶりに、よし!文章を書くぞ!という気になった。

環境を変えると普段枯れ果てたモチベーションが急に湧くことがある。

家ではいつもテレビを見たり夫と遊んだりしてダラダラしてたら週末が一瞬で終わる。それはそれで別にいいんだが、時にはホームを離れて非日常に浸ることも良いなと思う。なんだかんだでいつ何があるか分からないのが人生なので、自由に動けるうちはなるべく健やかに軽やかに動きたいものである。